十干物語:甲(きのえ)君の自立1:旅の始まり(1)
今回から、十干にまつわる様々な特徴を、分かりやすく物語形式でお伝えしていきたいと考えております。陰陽五行説は、中国古代に成立し、宇宙の全てを包括した思想です。この文章を読む方々が、東洋占術を学ぶ、または、関心のある際に、お役に立てれば、幸甚です。
ここは、宇宙に存在する五行全ての元締め、とでも言うべき「五行の王宮」です。
伏羲様は、その王宮の主です。
ある時、伏羲様は思いました。
わしも長い間、十干たちを指導してきたもんじゃ。
でも、そろそろ、あの者たちをより鍛えるためにも、それぞれに使命を与え、旅に出さねばならん時が来たようじゃ。
さ~~~て、誰からにしようかのう。・・・・
う~~~む。・・・・物には順番があるしのう。・・・・・
ここは、やはり「甲」からが妥当じゃな。
そこで、伏羲様は、「甲」を呼び出しました。
伏羲様、ぼくをお呼びでしょうか?
何かあったのですか?
甲や、よく来たな。
今から、お前に使命を与える。心して聞くのじゃぞ。
さて、お前も、長い間、わしの元で修業してきたが、そろそろ独り立ちをせねばならん時期に来たようじゃ。
え、えぇ~~~~!
独り立ちって、・・・・
自信ないです。
無理ですって~~~~。
あぁ、情けない。
だからこそ、旅に出すんじゃ。
「かわいい子には、旅をさせよ」と言うじゃろ。
お前は、今からすぐ、この地を離れ、お前にとっての仲間を見つけ、その仲間と共に、ここへ戻ってくるのじゃ。
期限は、1年。
無事、見つけられたら、褒美を遣わすぞ。
さぁ、すぐ旅立つのじゃ。
こうして、「甲」は、伏羲様に抗弁する暇もなく、五行の王宮を追い出されてしまいました。
伏羲様、ひどいなぁ。
いきなり呼び出して、いきなり旅に出ろって。
そのうえ、1年で使命を達成しろって。・・・
・・・・(ブツブツ)・・・・
それにしても、今は、まだ2月(寅月)。
ちょっと寒いよ。・・・・ブルブル・・・・
あれぇ~、雪まで降ってきたよ。
もう、ダメだ~~~。
お~~~い。
僕も連れてってぇ~~~~。
あらら、大きな木が、近づいてきました。
あれ、君も「木」じゃないか。
僕と同じ五行だよね。
えっへん。
もちろん、五行で言う所の「木気」だよ。
僕も、「木気」の「陽の気=陽干」だよ。
僕のパワーは、成長。
だから、僕の名前「甲(きのえ)」の意味するところは、樹木を意味する。
象形文字では、鎧や兜のように堅いものに覆われた物の形が由来。そこから、「今から大きくなる」と言う意味を持つ。
また、作物の成長で例えると、「堅い殻に覆われた種子が芽を出していこうとする状態」の意味から、成長の度合いを表すと、一つ目の段階。
「木の兄」であって、弟は、「乙」。
中身は、真面目、成長、まっすぐ、おおらか、努力、生命力、責任感、プライド、正義、勇敢、行動力、挫折すると立ち直りにくい
と言われているんだ。
そっか。
同じ「木気の陽気=陽干」同士だし、気心も知れ、助け合うことも多いだろうから、一緒に行こうか!
同じ「甲」同士なので、意見が合うのが早く、二人は一緒に旅をすることにしました。
すると、またもや、誰かが二人に近づいてきました。
待ってぇ~~~~、私も連れてって~~~~~!
おやおや、今度は、花が二人に声を掛けたのでした。
君は、「花」だよね。
えっ~~と、「花」は、「十干」で言うと、「乙」だよね。
ええ、そうよ。
私は、「木気」の「陰の気=陰干の、乙(おつ)」よ。
私のパワーは、守備本能。
だから、私の名前「乙(おつ)」の意味するところは、二番目を意味するの。
象形文字では、ヘラや、紡ぎ車のように、織物の糸を作る際に、ジグザグに繰り返したりする形が由来。
そこから、「紆余曲折をしても、前へと進んで行く」と言う意味を持つ。。
だから、「甲」のように樹木ではなく、草花にたとえられる。
また、作物の成長で例えると、「種から出た草木の芽が、地上に出ようとして曲がりくねった状態」の意味から、成長の度合いを表すと、ふたつ目の段階。
「木の弟」であって、兄は、「甲」。
中身は、従順、協調性、穏やか、控えめ、謙虚、優しさ、安定志向、誠実、心の中に強い意志と情熱、意思決定の場面に於いて、優柔不断になりがち
と言われているのよ。
へぇ~~~~、同じ「木気」でも違うね。
でも、同じ五行だし、「甲」君、一緒に行っても、いいかな?
いいよ~~~~。
Let’s Go !
そうして、3人は歩き始めました。
少し時間が経ってから、乙さんが言い出しました。
あ~~~、もう無理。
歩けない。
誰か、おんぶして~~~~。
とうとう、乙さんが、泣き出してしまいました。
もう、・・・・・
乙さん、頑張って歩こうよ。
目的地は、まだまだ遠いんだよ。
無理、無理~~~~。
もう無理~~~~。
一歩も歩こうとしない乙さん。
すると、
仕方ないなぁ。
このまま、ここに居る訳には行かないし。
僕が、乙さんをおぶってやるよ。
と言って、乙さんをおぶってあげることにしました。
しんどくなったら、僕に言って。
すぐ代わるからね。
うん、分かった。
さて、おんぶして貰っている乙さんは、その時、心の中で、こう思っていました。
はぁ~、楽ちん、楽ちん。
やっぱり、私のような、か弱い人は、誰かに頼るのが一番。
目的地まで、ず~~~と、こうして貰おうっと。
はてさて、この3人の旅は、これから先、どうなっていくことでしょう。・・・・
ー続くー
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と言うことで、今回の旅で、「甲」君は、二人の仲間に出会うことが出来ました。
それを高い所から見ていた伏羲様。
「甲」は、五行説で言うところの「木気」じゃ。
「甲」が出会ったもうひとりの「甲」、「乙」は、同じ「木気」に属しており、比和(仲間)の関係じゃな。

すると、お側に仕えていた「桜ちゃん」が、伏羲様に言いました。
でも、何だか、同じ木気でも、えらく違うように思えます。
乙さん、甘えすぎですよ。
ふぉ、ふぉ、ふぉ、・・・・
その気持ち、分らんでもない。
それが、優劣ではなく、「気」の違いからくるもんじゃよ。
同じ気であっても、
陽の気=甲、陰の気=乙。
似ているところと違うところがあるんじゃ。
その特徴は、もうひとりの「甲」と「乙」の話の所で、先に列挙していたじゃろ。
でもな、大事な事は、五行の配置じゃよ。
そして、人の運勢を見るには、生年月日から作る命式以外の、大運、歳運の3つも考慮せねばならん。
もし、自分の命式に於いて、
木気の「甲」が(天干、地支を合わせて)多い(3以上)場合、
そこへ、また「甲」が来ると、木気の居る場所(通変星)が増大して、その通変星の象意に振り回される。
例:官星に「木気」がある→仕事(男性)、仕事や結婚(女性)に支障を来たす。
若しくは、「甲」の居る通変星の対沖(反対側)の通変星が、攻撃されてしまい、その通変星の象意が、ダメージを受ける。
例:日主(比劫星)に「木気」がある→対沖の財星に対し、財や女性(男性)、財(女性)に、どん欲になりすぎる。
木気の「甲」が(天干、地支を合わせて)少ない(1or2)場合、
木気の居る場所(通変星)をしっかり支えると言う意味で、、先ず同じ木気の「甲」があることを喜ぶ。
その通変星が、一本、筋が通ると言うか、根性が着く、と言うか、しっかりしてくる。
例:身弱で、日主(比劫星)に「木気」がある→行動的になり、責任感がもてるようになる。

そうなんですか。・・・・
ケースバイケースで考えるのですね。
今回の話の場合、
「甲」に、「甲」は、まだ良い点があるが、
「甲」に、「乙」が来ると、あまり嬉しくないもんじゃ。
なぜかと言うと、
「甲=樹木」にとって、「乙=草花」は、自分にまとわりつく「つる」のようにしか思えないのじゃよ。
支え会う関係にならず、一方的に、自分が相手を支える、と言う形になる。
たとえば、
日主(比劫星)が、「甲」、天干で、月柱や時柱に「乙」が来る。
→身内、友達や子供の件で、相手の面倒を見ざるをえなくなりやすい。
あら、大変。
でも、逆の場合は、どうですか?
「乙=草花」にとって、「甲=樹木」は、「つる」である自分がまとわりつくことの出来る「大木」のように思え、とても有難いもんじゃよ。
助けてもらえる関係、と言う形になる。
たとえば、
日主(比劫星)が、「乙」で、月柱や時柱の天干か地支に、「甲」が来る。
→月柱(社会運)、時柱(晩年運)で、自分を支えてくれ、安心して、活躍出来る。
わぁ~~~、お得ですね。
私、乙さんが羨ましい。
ははは、・・・そう単純な話では終わらんよ。
どの五行の十干でも、共栄(相生)、共存(比和)、対立(相克)、と言う関係はあるもんじゃ。
十干に「優劣なし」じゃ。
陽の気、陰の気と言う「字」から受ける印象に振り回されるのが、一番、良くない。
「己を知る」ことが、最も大切なことじゃよ。
生年月日、大運、歳運、この3つを把握すると、人生が生き易くなるぞ。
そうですね。
でも、そういう事が事前に分かっていれば、安心ですね。
それが、占術の持つ最大の強みじゃ。
生年月日は変えられんが、時の流れを如何に読み、活かすか、が占術に求められていることじゃよ。
これから、「甲」が、どんな旅をしていくかが、楽しみじゃな。
私も、同じで~~~~す。