【気学】「六十四卦物語ー2:坤為地(こんいち)」

ここは、京都。河原町今出川近くの鴨川の河川敷ー通称「鴨川デルタ(高野川と鴨川の合流点であり、三角州となっている」から始まる、お話です。二人の女子が、居ます。何か、お悩み中です。それを空から見つけた「謎のお爺さん」が、今回も、易を使って活躍します。さて、どういうお悩みなのでしょうか?

鴨川デルタ

ここは、鴨川デルタ・・・地元民や観光客など、多くの人が訪れる場所です。近くには、糺(ただす)の森や、下賀茂(しもがも)神社があり、アニメの聖地と言われている「出町柳(でまちやなぎ)の桝形(ますがた)商店街にも、すぐ行ける場所です。

6月。二人の女性が、鴨川デルタの突端に腰を下ろし、何やら話している様子。どうも、一人の女性の方は、深刻そうです。

どうしよう?
もう何日も何日も、ずっと考えているのに・・・・
私、決められない・・・・。

う~~~ん、わかるわぁ~~~、その気持ち。
でも、期日がある事やし、決めなあかんよ。
この、ご時勢に、就活で、2つの所からのオファー来てるねんよ。
有難い話やん。
私なんて、まだ決まってないよ。
私の方こそ、「どないしょー」やわ。

ごめん。
自分の事で相談に乗ってもらって・・・・。

ええよ、友達やん。
どっちの会社も、両方を比べて、長短ありは、仕方の無いことやん。
でも、悩むのは、わかる。
A社にすれば、家を出て、東京に行くことになるけど、仕事は面白そう。
B社にすれば、自宅から通えるけど、仕事の内容が、あまり興味が湧かなそう。

そうや、こういう時は、神頼みで決めたらええ。
下賀茂さん(下賀茂神社)に行って、おみくじ引こう!

でも、おみくじで人生、決めるって、ちょっと・・・。

ここに居ても、名案が浮かばへんから、神様に聞こう。
おみくじを引かなくても、何か、ヒントが待ってるかも?
ほら、さっさと立って!
下賀茂さんが待ってはるよ。

こうして、二人は、鴨川デルタから離れ、道路一本を渡り、糺の森から、下賀茂神社を目指すことにしました。

糺の森
糺(ただす)の森

糺の森は、糺の森は下鴨神社の境内に広がる、参道の役割も果たしている原生林です。広大な面積(東京ドームの、約3倍)を持ち、『源氏物語』や『枕草子』にも登場する史跡です。毎年、夏になると、「古本市」が開催され、多くの人が訪れる、清々しい氣に満ちた森です。

下賀茂神社
下賀茂神社

糺の森の参道を通った先の「下賀茂神社」は、正式名称を、「賀茂御祖神社(かもみおやじんじゃ」)と言います。山城(やましろ)の国(昔の、京都の名称)を開いた「賀茂建角身命(かもたけつぬみのみこと)」と、その子神である「玉依姫命(たまよりひめのみこと)ー 賀茂別雷命(かもわけいかづちのみこと=上賀茂神社(かみがもじんじゃ)の御祭神)の母」が、御祭神です。山城の国「一宮(いちのみや)」でもあることから、多くの人が訪れる京都市内でも屈指の有名な神社です。

二人の女子は、本殿前で参拝しました。何度も来た事のある神社ではありますが、今回は、人生の岐路に関する事なので、祈願に力が入ります。長い間、頭(こうべ)を垂れて、お願いをした二人でした。

その後の二人は、・・・・

なぁ、何かひらめいた?

全然・・・・。
お祈りしてる間も、今も、何も・・・・。
おみくじも、変なん出たら怖いし、引けへん。

う~~~ん。
私も、ええ仕事と巡り合うようにって祈ったけど、何のインスピレーションも、湧かへん。
御神徳は、すぐ出て来るものやないけど、いつ、出て来るんかなぁ・・・・
これから、どうしょ?
恋愛で有名な「相生社」や「河合神社」に行っても、仕方無いし、・・・・
帰りに、「ふたばの豆餅」でも買う?

うん、そうしょう。
今日は、就活祈願で来たし。

こうして、二人は、下賀茂さんを後にすることにしました。

本殿を出て、すぐの所に、「南口(みなみぐち)鳥居」があります。二人が、そこを通り抜けた時、反対側から、一人のお爺さんが歩いて来ました。すれ違った時、お爺さんは、いきなり二人に声を掛けてきました。

お嬢さん方、ちゃんと鳥居さんに、御挨拶をせねばならんよ。

と、声を掛けて来ました。

二人は、びっくりしました。

全く知らない人から、いきなり声を掛けられたのですから・・・

ははは・・・
わしは、普通のお爺さんじゃ。
怪しくは無いぞ。但し、ちょっぴりお節介なだけじゃ。
神様にお参りした後の、お作法は大事じゃよ。
本殿を出てから後の、鳥居さんに向かっても、きちんと頭を下げておかんとな・・・・
神社全てが、御神域じゃよ。

そのお爺さんは、二人を見て、にこにこと微笑んでいます。優しそうなお爺さんのように思えます。でも、お爺さんの恰好は、お坊さんの普段着と言うのか、それとも、茶人みたいな恰好と言うのか、普通のお爺さんの服装ではありません。

えぇ?・・・
そうだったんですか?
では、改めて、「鳥居さん」に頭を下げます。
お爺さん、有難うございます。

二人は、改めて、鳥居さんの左側に立って、頭を下げました。それを見ていたお爺さんは、言いました。

ははは・・・
それで、ええんじゃよ。
そうして、一つずつ覚えて行くがええ。
神様は、高い、高い所から、皆を見ておられるしのう。

さて、お嬢さん方は、何かお悩みかのう?
わしには、そう思えるがな・・・・。

お爺さん、凄いです。
勘がいい方なんですね。

ははは・・・。
そうとも言えるが、わしは、こう見えても「占い」も得意じゃよ。

占い師さんですか?

まぁ、そんなところだとも言えるのう。
さて、お嬢さん方は、何をお悩みかな?

実は、私も、彼女も、「就活」で悩んでいます。
私なんて、物凄く一杯、エントリーシートを送ってるのに、いつも門前払いばっかり。
彼女は、内定を貰ってるけど、どちらにすべきか悩んでる最中です。

ちょっと・・・・・
そんなに、知らん人に、ペラペラと話してええのん?
恥ずかしいやん。・・・

ほう、・・・それは、大変じゃな。
今日は、暑くも無いし、この後、鴨川デルタに行って、占ってやろうかのう。

うわぁ~~~、ナンパされた。
でも、面白そう。
タダなら、行きます。

ははは・・・。
こちらのお嬢さんは、分かりやすいお嬢さんじゃ。
構わんよ。

と言う事で、渋る真剣な女性を引っ張るようにして、3人は、鴨川デルタに着きました。

さぁて、ここに、サイコロが3つある。
このサイコロは、易の略筮法で使えるサイコロじゃ。
どっちのお嬢さんから振るかのう。但し、心を願いに集中させてやらねばならんよ。

はい、では、私から・・・・・
(就活の成功、・・・就活の成功・・・、ええ仕事と巡り合いますように・・・・)
それっ!

元気な女性が、サイコロを振りました。

地面に置かれたハンカチの上には、漢字で書かれたサイコロと、漢数字が書かれたサイコロが、それぞれ、転がっています。

それぞれのサイコロの上の面は、「坤(こん)」、「坤」、「五」となっています。

ほう、・・・・
「坤為地(こんいち)」の「五爻(こう)」か・・・
いやぁ、面白い、面白い。

えぇ?・・・
何だか良く分からないけど、大丈夫ですか?
早く、結果を言って下さい。お願いします。

お爺さん、この人、何でも待てないタイプの人です。早く教えてあげて下さい。

あのな、結論を先に言うと、このお嬢さんの普段の方法と、真逆の方法でやればええんじゃよ。

はぁ?・・・

あのな。
易は、森羅万象を、陰陽五行で見て行くものじゃ。
過去、現在、未来を、見渡せるものじゃよ。
易の卦は、六十四ある。それを、占う者の願いや課題に合わせて、「爻(こう)」で対処して行くんじゃ。

今回は、易の六十四卦の「二番目:坤為地」じゃ。元の漢文では、
坤,元亨,利牝馬之貞。(坤は、元いに亨る、牝馬の貞しきに利ろし。)

陰陽で言えば、最も「陰」じゃ。「上卦」も「下卦」も、全てが「陰」じゃ。
本来、「坤」は、天の「乾(けん)」に対し、正反対のものじゃ。つまり、「地」じゃ。
大地、女性、包容力、従順、根気良い、努力、物を成長させる、などが、象意(しょうい)なんじゃよ。

文王後天八卦

私、本当は、女らしいんですね?
自分では、そうは思っていませんけど・・・・

これこれ・・・・、お嬢さんの性格を言っているのでは無いぞ。
占断の結果じゃよ。
全く、早とちりしてからに、・・・・
そもそも、就活じゃろ。

ふふふ・・・、あなたの性格、お爺さんに見抜かれてるわよ。

お爺さん、・・・
と言うことは、彼女は、普段の方法と違う遣(や)り方ですれば良いんですね。

その通り。
もう少し詳しく言っておこうかのう。

漢数字のサイコロは、六面体じゃ。これが、「爻」を表す。
各「爻」は、「六十四卦」の対処法じゃ。

初爻:履霜堅冰,陰始凝也。馴致其道,至堅冰也。(霜(しも)を履(ふ)むとは、陰始めて凝(こ)れるなり、其の道に馴れ致さば、堅き冰に至らんとなり)
小から大。分岐点。
二爻:六二之動,直以方也。不習无不利,地道光也。(六二の動きは、直(ちょく)以って方なるなり、習わざれども利(よ)ろしからざるなしとは、地道光れるなり)
着実が実を結ぶ。
三爻:含章可貞,以時發也;或從王事,知光大也。(章(あや)を含めり、貞(つね)ある可(べ)しとは、時を以って発すべしとなり、王事に従うこと或りとは、知光大なるなり)
「能ある鷹は、爪を隠す」ように、大人しくしておく。
四爻:括囊无咎,慎不害也。(嚢(ふくろ)を括(くく)る咎无(とがな)しとは、慎めば害あらざるとなり)
自重じゃ。口は災いの元。
五爻:黃裳元吉,文在中也。(黄裳元吉(こうしょうげんきち)とは、文、中に在るなり)
人と和み、意見を受け入れる。
上爻:龍戰于野,其道窮也。(竜野に戦うとは、其の道、窮(きゅう)せるなり)
自信過剰にならぬこと。
用六:用六永貞,以大終也(用六永く貞(つね)あるは、以って大いに終わるなり)
略筮法では使わない。本筮法、中筮法では使います。

今回、お嬢さんは、「五爻」じゃから、「就活」と言う問題に当てはめてみよう。
これが、違う「恋愛」や「契約」と言う問題となると、おおもとは変わらずとも、また、違う説明になるぞ。

今回は、人、それも、「坤」なので、女性の年上の人の意見を聞いたりすると、良いかものう。
エントリーシート作戦よりも、生身の人間に会って、話を聞いた方が、良いな。
くれぐれも、話を聞いている時、すぐ自分の意見を言ってはならんよ。
受け身に徹しなければ、解決のヒントは、得られんよ。
出来るかな?

う~~~~ん・・・・・
正直、難しい課題かも・・・・
でも、現在の状況を何とか変えたいので、この後、母親や親戚のおばちゃんや、大学の就職センターの女性の職員さんに、相談したいと思います。
あ、そうだ。バイト先のパン屋さんの店長も、女性です。

人には、それぞれ自分を取り巻く人間関係と言うものがある。
互いに、有形無形の影響を与え合うものじゃ。
話が出来る関係と言うのは、目に見えない気脈が通じ合っているからのう。
そういう関係は、大事にしなされよ。

はい、お爺さん、有難うございます。
お爺さんって、本当に凄い方なんですね。
私、頑張りますからね。
見ていて下さいね。バッチリ決めますから・・・

ところで、お爺さんから、さっき、ナンパされたお返しに、逆ナンしますね。
お爺さん、御礼に、今から、「ふたばの豆餅」を御馳走しますよ。
行きましょうよ!

全く、調子のええ子やわ。・・・
お爺さんかって、都合あるやろし・・・
お爺さん、お時間、大丈夫ですか?

ははは・・・、わしは、暇人じゃから良いよ。
それでは、厚かましくも、御馳走になろうかのう。
その後で、こちらの奥ゆかしいお嬢さんを占うのは、どうじゃ?

私は、いいです。
怖いです。

まぁ、そう言わずに。・・・

とりあえず、「ふたば」へGO!
豆餅が、私たちを待ってはるよ。
食べたら、気持ちも変わるかも知れへんし。

本当に、面白い二人じゃな。
さて、一緒に行こうかのう。・・・

これ、元気なお嬢さん、そう早く歩かんでくれ。
わしのような年寄りを大事にせんか・・・
豆餅は、逃げやせんぞ。

こうして、3人は、枡形商店街の「ふたば」を目指すことにしました。人気の豆餅は、買えるでしょうか?

豆餅
ふたばの「豆餅と水無月」

そして、奥ゆかしいお嬢さんの占いは、どうなるのでしょうか?

龍
続く